追悼・スズメバチ

追悼 スズメバチ

以前、落ちていた亡骸を家に持ち帰り、深度合成で撮影したコガタスズメバチ。


飛翔するオオスズメバチ(正面)
捕食動物はどこかしら精悍な面構えで、哺乳類にしても、鳥類にしてもカッコイイが昆虫の中ではオオスズメバチが筆頭に挙げられるのではないか、と密かに思っている。どれにも共通するのは、コワイけどカッコイイ。
恐れられ且つ人間の命を脅かす動物の中には、北米にグリズリーやクロクマ、アフリカにライオンやチータなどが挙げられるが、東京ではスズメバチが筆頭のような気がする。わずか4-50mmの生き物なのに、地球最強の捕食動物を恐れさせる存在であるがゆえ虐げられる。

いつも撮影に行っている公園で大捕物がありました。



スズメバチです。駆除業者さんを頼んでいるということで、業者さんが来るまでの間、公園職員の方にお願いして撮影させていただきました。
巣があるらしいということでしたが、結論から言うとクロスズメバチの巣をオオスズメバチが襲っていて、近くにあるらしい巣に獲物を運んでいるというのが真相のようです。獲物を捕らえて手ぶらで帰って来るまでおよそ3〜5分。当初、職員の方に聞いたら「50匹くらいいる」と聞いていたのですが、個体識別まではできないので正確な数字はわかりませんが、数匹の群れが入れ替わり立ち替わりやってきているだけのようです。

クロスズメバチをくわえ飛翔するオオスズメバチ。
今回の一件は公園内で最も人の集まる建物の近くにクロスズメバチの巣があったことで起きた。
オオスズメバチはその巣を襲い、獲物を自分たちの巣に持ち帰っていただけだった。


今回の一件とは種が違うコガタスズメバチ。

防護服に身を包んだハチの駆除業者さん。寸分の隙もない。

仕留められたオオスズメバチ。
つい数分前まで元気に飛んでいた姿を見続けていたので、とても切ない気分になり、最後まで見届ける前にその場を後にしてしまった。

人が死に至る可能性がある動物が人の多いエリアに出てくれば駆除しなければならないということも理解した上で話を進めると今回はおそらく駆除をする必要はなかったように思います。なぜなら、
オオスズメバチの巣ではなかったこと。
クロスズメバチの巣を襲っていたこと。
獲物のクロスズメバチの巣が空になれば、オオスズメバチが来なくなる可能性があったということ。

襲われる可能性はゼロではないですが、スズメバチに限らず、多くのハチは物理的に刺激しなければ、まず襲ってくることはありません。石のように固まっていれば、様子を伺うために近づいてくることはありますが、獲物ではないこと、もしくは危害を加えるものではないことがわかると去っていきます。近付いてきた時に手で払ったり、逃げたりして動くことが、ハチ自身や群れの存続の生存を脅かす「危害を加えるもの」として攻撃対象になることを頭の片隅に置いておくことが大切です。追い払うという「動き」自体が全くの逆効果なのを肝に銘じておきましょう。
今回の撮影では、レンズ先端からハチまでの距離は5cm程度でしたが、ただの障害物扱いで、避けて飛んでいきます。襲われそうになったのは、一回だけで、深追いしすぎて機材が当たり、物理的に刺激した時に一回だけ威嚇され、耳元にぶつかってきただけで、固まったら去って行きました。また、フラッシュの光は刺激するのではと心配する方もいるかと思いますが、1000回以上フラッシュを焚きましたが、一回たりとも光源に向かって襲ってくるという反応はありませんでした。基本的にフラッシュの光は全く意に介さないようです。大体フラッシュの何千倍もの光量を持つ太陽光の下で光を見つめているような角度で佇んでいても大丈夫な生き物なので「今回は」という注釈つきですが、問題ありませんでした。
ただ撮影にあたっては、フード付きのジャケットを着て、肌の露出を最小限にしています。

今回の大捕物は公園という不特定多数の人々が集まる場所の近くに現れたということで公園側が対応を迫られたということは理解できますが、地球最強の捕食動物である我々はもう少し冷静に対処する方法もあったのではと感じた一件ではありました。

後日談となりますが、その後スズメバチがどうなったか公園職員の方の一人に伺うと最終的に3匹のスズメバチを回収したということでした。

もう近くに来ないようにひっそりとどこかで狩りをしていることを祈るばかりです。





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