2017年2月25日土曜日

十勝岳へ雪の結晶を撮りに行ったというのに晴れた。

20170207-11十勝岳の麓に雪の結晶を撮りに行った際の旅日記です。
深度合成を終えてからと思っていたら、春を感じる時期になってしまいました。

噴煙を上げる十勝岳を左手に見ながら三段山へ向かう。
十勝岳の麓に雪の結晶を撮りに行ったというのに、生憎の晴れ。雪の結晶を撮りに来たのに晴れては困るのである。

仕方がないので、宿の白銀荘でスノーシューをレンタルして十勝岳を見渡せる三段山に登ってきた。
久しぶりの冬山ハイキング。
ソレルは元々カナダの雪原を歩く仕様としてデザインされているためか山登りには難儀した。けれど、撮影を始めて体が冷えてくると足元の暖かさがありがたい。本格的な登山をするのには全く向かない。

スノーシューは、外の枠に爪が付いてないと、急な斜面では滑って体力の消耗が激しくなる。日本の雪は極地と違ってそれほど沈まないのであまり大きなスノーシューはいらないようだ。
撮影用のスリングバックは片側に荷重がかかりっぱなしなので、山登りの撮影には罰ゲーム状態になることを痛感する。こういう状況では、バックパック仕様が正しい選択だと思う。
パタゴニア・ナノエアフーディーとR2ジャケット、そしてベースレイヤーにキャプリーンSWの組み合わせで登ってきたが、途中大汗をかいて、ジッパーを全開にして少しの間撮影していたらいつの間にか乾いていて、とても優れもの。特にナノエアフーディーはハードシェルと違い風を通すので、クールダウンの度合いが心地いい。生地を通して抜けていく風が冷たく感じず、服にこもった温まった空気が肌を撫でていく感じで今までになかった感覚だ。体が冷えてきたら、ハードシェルを羽織れば、保温性も高まるので、動きと待機を交互に繰り返すこのような状況の撮影にはうってつけのレイヤリング。
それはさて置き、雪は水蒸気が固まったものというが、固まるには核となる粒子が必要らしい。この十勝岳の噴煙がその核の供給源なのか?
雪に覆われた雄大な景色を見ているといったいどのくらいの雪の結晶が落ちてくると、この景色を見せてくれるのだろうかと、気が遠くなってくる。雪面に目を凝らすとときおりキラキラと光る部分があるのに気付く。ほんの少し視線をずらしただけで、その光源は消え、違う雪面が輝く。そのキラキラ光る一つひとつが今回ここに来た目的の雪の結晶だ。
山へ登る途中樹氷を撮影。ビッシリと雪に覆われている。
樹氷をモノトーンな雰囲気で。

樹氷を覆う雪も元を正せば一片の雪の集まり。
なぜ十勝岳に来たのかは、とても単純だ。
中谷宇吉郎が随筆『雪』の中で「実によく降る」と書いていたからだ。
日本、否、世界の雪の研究の第一人者で、その研究の第一歩を踏み出したのが、この十勝岳の麓に建つ白銀荘だった。そして、彼が過ごした建物が未だに残っているという。その名残が残る場所で「実によく降る」という感覚を是非とも味わいたかったのだ。
中谷宇吉郎が雪の結晶の研究を始めるのに選び、過ごした旧白銀荘。当時は道がなく、馬橇に機材や資材を積み込んで、麓の村から5時間かけて訪れたという。現在でも冬季にここへ向かうには、緊張する道が続くが、道路のなかった時代に向かうパイオニア精神には頭の下がる思いだ。
現在の白銀荘。日帰り温泉と宿泊施設として近代的な温泉施設として生まれ変わっている。ドミトリー方式の宿だが、海外で安宿に泊まり歩いていた私にとっては、「あれ、カナダのYHと同じ雰囲気?」と懐かしく思えるくらい快適な空間だった。実際同室だったのは、ニセコでスキーのインストラクターをしていて休暇で来ていたカナダ人、英国人の4人組と悠々自適にリタイヤ生活を送る元専業農家のおじさんだったし、共有スペースではドイツ語、スペイン語、韓国語、関西弁などが聞こえてきて、実に国際色豊かだ。訪問者の半数近くは外国からの旅行者のようだ。
中央左の建物が現在の白銀荘、中央右が旧白銀荘。
今回、是非とも試してみたかったのは、深度合成による雪の結晶写真の撮影だ。
実は2年前2015年には雪の深度合成の撮影システムは出来上がっていて、何点かは撮っているのだが、満足のいくものが殆ど撮れなかった。2016年は雪が少なく行かずじまい。そして今回2017年は、降雪状況も気温もまずまずと判断し、より撮影の条件が良さそうな北海道へ満を持して行ってきたという次第だ。実際、滞在費の総額(宿代、レンタカー代、宿泊費等)を計算すると飛行機代を含めても本州での滞在費と比べてもトントンかわずかに安く、時間的にもさほど変わらないことに正直驚いた。本州では、なかなか条件がかみ合わず、少ないチャンスをものにするためにがっつき過ぎていて、なかなかやりたいとこが試せずにいた。今回は今まで消化不良気味だったシステムの再検証を始め、新たに自作したカラーフィルターや照明方法などいろいろ試してみたいことが目白押しだった。
東の空に昇る十四夜の月とオリオン座と樹氷。宿から少し歩いただけで、こんな景色が撮れる場所を他に知らない。

実のところ、到着直後から雪が降り続いていて、肝心の雪の結晶は、到着後の午後から翌日の昼前までぶっ続けで撮影していたので、ある程度は撮れ、試したいことも一通り終わっていたので、気分的には楽になっていた。結果的に言うともう少しきれいな結晶に出会いたかったが、これまで消化不良な気持ちは晴れたので、正直晴れてくれたのは、いい気分転換になっていたのである。
さて、宿と場所の説明と晴れてしまった時の「雪の結晶撮影行の過ごし方」はこのくらいにして、そろそろ肝心の雪の結晶を見てみよう。

樹枝状六花 EOS 5D MarkIII Zuiko Macro 38mm/f3.5 w/RMS-M42-F-EFアダプター ベローズ使用 @f5.6 1/200 ISO 200 倍率:5倍程度。26枚をSerene Stackerで深度合成処理
ご存知の通り、雪は無色透明なのだが、光原と被写体の間にカラーフィルターを噛ますことで様々な色が混ざり合い、独特な雰囲気で輝き始める。結晶によっては成長過程の層が見えてくるほどの効果があって、ゾクゾクとしてくる。中谷宇吉郎氏が「雪は天からの手紙である」と言った手紙に書かれている独特の暗号を読み解く術をまだ持ち合わせていないので、撮ることしかできないが、雪が生まれ、地上に落ちてくるまでの間の道程を写真を見ながら、なんとなく想像することはできそうだ。

雲粒に覆われた角板付六花 D7100 Zuiko Auto-Macro 20mm/f2.0 w/OM-F自作アダプター ベローズ使用 @f4 1/250 ISO200 倍率:10倍相当(35mm換算)16枚をSerene Stackerで深度合成処理
中谷宇吉郎氏の『雪』の中で、雪の写真家・ベントリーのことに触れていて、「彼がもし、自然を忠実に観察するという科学者の態度をもって、その一生の仕事を続けたならば(中略)沢山の複雑な形の雪が存在することを一般の人に教えたであろう」と述べているが、雪の結晶を撮るにあたって座右の銘にしたいと思う言葉だ。その答えの一つがこのような雲粒付の結晶だ。
深度合成で撮影すると雲粒の一つ一つが隈なく写っていて驚く。キレイかどうかは別として、今までのシングルショットでの撮影ではとても難しい被写体だった。この結晶が地上に降り注ぐまでの苦難の道のりが刻まれている様子が感じ取れる。
重なり合った樹枝状六花 EOS 5D MarkIII Zuiko Macro 38mm/f3.5 w/RMS-M42-F-EFアダプター ベローズ使用 @f5.6 1/200 ISO 100 倍率:4倍程度。36枚をSerene Stackerで深度合成処理
実際に撮影していると完璧なシンメトリーの結晶に出会うことよりも、少し不揃いの雪の結晶の方が圧倒的に多い。老眼の進んだ私の目にはキレイに映った結晶も撮ってみて初めて、重なっていたり、欠けていたり、くっつきあったりしていることに気付く。また、このような重なり合ったものは以前は撮らなかったが、深度合成でどこまで精細さを欠かずに表現できるのか確かめるために撮影してみた。重なり合った部分はレタッチで追い込んでいけば、さらに完成度は上がるが、とりあえず、簡単なレタッチで済ませたものを参考までに掲示している。これでも2時間くらいはかかっている。












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